第10回 「ベトナムの就業規則」

諸外国の労働環境から見るニッポン

皆さんの会社では就業規則を整備しておられるでしょうか。
会社の秩序を守り、トラブルを防止するためにも、就業規則は企業規模の大小にかかわらず必要不可欠なものだと言って過言ではありません。

海外にも就業規則の仕組みをもつ国は多くありますが、今回はベトナムについて見てみることにします。

まず労働環境を日本と比較してみることにしましょう。労働時間は日本と同じ一日8時間が上限となりますが、1週間では48時間労働と定められています。休日も日本と同様に週に一日以上を与えることが必要ですが、休憩時間にあっては8時間労働に対して少なくとも30分と、日本より比較的労働時間が長い傾向にあるようです。
一方で割増賃金に関しては通常労働日における時間外労働は150%、週の休日や祝日の労働は200%。また深夜労働については平日195%、休日260%、祝日390%とかなりの高率といえます。

ベトナムは経済的にも急成長をとげつつあり、従来は産業別労働人口で多くを占めていた農林業従事者がその率を下げ、一方で製造業、サービス業が大きく伸びている現状です。このため、例えば初めて工場労働に就くというような人も多く、仕事に対する考え方や意識面の教育が充分でないと、経験不足も相まって労働争議に発展するという例も見られるようです。こういうことからもやはり就業規則は有用といえるでしょう。しかもベトナムの労働関係法令は比較的大雑把な内容のため、具体的な運用方法などは就業規則で定めることが不可欠なのです。

さて、このような特徴のあるベトナムでは日本と同様に10名以上を雇用する会社は就業規則の作成が義務付けられています。日本の場合、会社が作成して従業員代表の意見をきいた就業規則に法的な問題がなければ、労働基準監督署は基本的に受理するだけで、内容に関するアドバイスや聞き取りなどは行われないことが普通ですが、ベトナムの場合は監督官庁である労働傷病兵社会福祉局への登録時に内容の修正を求められることもしばしばあるようです。また作成時には事前に労働組合とその内容について協議を行わなければなりません。

作っただけで安心してしまいがちな就業規則ですが、そういう意味ではベトナムのほうが形骸化したものではなく、「使える」就業規則となるかもしれません。今お手元にある就業規則はいつ作成されたものですか?最後にいつ変更されたものですか?本当に「使える」就業規則かどうか、この機会に見直しをしてみるのはいかがでしょうか。

●次回は「ノルウェーの育児休業」を取り上げる予定です。

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