第11回 「ノルウェーの育児休業」

諸外国の労働環境から見るニッポン

皆さんの会社で男性社員が育児休業を取得した実績はありますか。

制度としては男性も育児休業を取ることができることは皆さんご存知でしょう。厚生労働省すらも「イクメン」などという言葉を使ってまで、イメージを上げ、さらに広く認知させようと躍起のようですが、正直なところ実態はどうなのでしょうか。

ある調査によると、子供が生まれる男性 100 に対して、
○育児休業を希望する男性 30
○実際に育児休業を取得した男性 2
○育児休業給付金を受けた男性 0.4
○3ヶ月以上育児休業した男性 0.1

という結果が出ています。まあ、これでは実際にとったという話がなかなか聞かれないはずです。因みに給付を受けていない人がいるのは、育児休業期間が極端に短いことが理由で、休業したとしても日数「1~5日」が4割、「5日~14日」が2割と2週間未満で6割を占めるため、というわけです。

では男性の育児参加に積極的な北欧諸国のうちノルウェーではどうなのか、を見てみることにしましょう。

ノルウェーでは1993年に世界に先駆けて「パパ・クオータ」制を導入しました。クオータとは「割当」のことで、所得補償率100%、42週間の育児休暇のうち、男性は最低4週間の休暇を取ることとなっています。男性が仮にとらなかった場合でも、その分は女性に振り分けることはできず、その部分は無効になるという仕組みです。

ノルウェーではこの制度導入前は5%に満たなかった男性の育児休業取得率は現在では何と90%にまで達し、出生率も1.9になったといいます。
実は日本でも平成21年にパパ・クオータを参考にした「パパ・ママ育休プラス」制度を導入していますが、まだまだ取得率が向上したとは言えない現状です。

もちろん北欧の特徴である極めて高い女性の社会進出率や、社会全体の男性の育児参加に対する考え方など、日本と簡単に比較することはできませんが、それは言い換えれば、男性が育児休業を取得しにくいという環境を変え、社会が理解を深めることにより、日本でも達成できないわけではないことを意味します。

会社としても戦力となる社員が長期に休むことで一時的な問題はあるでしょうし、給付を行う国の財政としても負担が大きくなるわけですが、長い目で見て少子高齢化に歯止めをかけ、次の世代のためになると思えば安いものといえるのではないでしょうか。

●次回は「シンガポールの外国人労働者問題」を取り上げる予定です。

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