第3回 「アメリカの労働契約」

諸外国の労働環境から見るニッポン

アメリカ映画を見ていると登場人物が上司に「お前はクビだ!」と言われるシーンがしょっちゅう出てきますが、実際にそんなことをして問題にならないのかとちょっと不思議に思えます。

日本においては御存知の通り「使用者が労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前に予告をしなければならない」と労働基準法に定められていますが、アメリカの場合はどうなのでしょう。

アメリカには一般的な雇用契約に随意雇用(employment at will)と言われるものがあります。簡単にいえば「一定の期間前に予告すれば企業側も労働者も理由の有無にかかわらず、いつでも解雇したり、離職することが自由にできる権利を認めた雇用」ということです。

さすが自由の国、と言いたいところですが、実はそれほど自由というわけではなく、このような雇用契約があると同時に公民権法第 第7編を始め州法などでは、出自、人種、性別、宗教、年齢などを理由に解雇することを厳しく禁じています。

従ってそれらの差別があって解雇されたとなると、即座に法律違反だとして解雇された従業員は、それらの法律を盾に会社を訴えるということが実に多いのです。
自由の国であると同時に訴訟の国でもあることをよく表しているといったところです。

さて日本では、政府がいわゆるアベノミクスの成長戦略の柱として国家戦略特区においける雇用規制緩和が進められていたものの、先日この「雇用特区」規制緩和については見送りとなりました。
とりわけ解雇についての反発は大きかったようです。

とはいえ日本における雇用慣行は国際的にも群を抜いて硬直していることは間違いないといえるでしょう。事実、2012年世界経済フォーラムで労働者の採用と解雇のしやすさ関するランキングで日本は144カ国中134位だったほどです。

業績の上がらない社員であっても簡単に解雇できず、解雇のルールが曖昧な日本が特殊なのか、労働者保護という観点で配慮がないといえるアメリカが特殊なのか…少なくとも実際に採用や解雇をドライに行うのは日本人にとっては難しいということだけは言えるのではないでしょうか。

●次回はイギリスの労災保険を取り上げる予定です。

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