前回は、面接に際しては「自分の窓を通してしか他人を見ることはできない」
ということをよくわかった上で、出来るだけ応募者の「本当の姿」を
引き出すことが重要であることをお伝えしました。
さて今回は「採用面接にどれだけコストをかけるか」について考えてみたいと思います。
突然ですが問題です。
A.面接は一回。社長が直接面接するだけ。
B.面接は三回。一次、二次とそれぞれ別の役職者、
最終は社長によって面接を行う。
AとBならどちらが好ましいとお考えでしょうか?
もちろん答えはBです。
ところが社員が数百、数千人もいるような大企業ならいざしらず、
中小企業においては、社長が一人で面接をして採用を決めてしまうケースは
現実には少なくないようです。
また、複数の人間が面接してそのうちの何人かが反対したにも関わらず、
社長の「鶴の一声」で採用が決まってしまうこともあります。
曰く「ここは私の会社だ。最終的な責任は私が取るのだから、
自分が気に入った人材を採用するのは当然だ」
あるいは「社長である私が一番経験も長く、どんな人間が会社に合うのかも一番良く知っている。
他人の意見よりも自分の判断こそ信用できる」
そんな風におっしゃる社長もいらっしゃいます。
しかしながら、そうしたやり方を継続して人を採用することは非常に危険です。
例えば「ゆとり世代」と呼ばれる最近の若い世代の扱い方やコミュニケーション方法は、
年配の経営者よりも現場に出て前線で活躍している若手マネージャークラスの方が
よりよく理解しているはずです。そう考えてみると、20代や30代前半の応募者の内面や
本心を見抜くには、30代から40代の若手管理職の意見の方が
的確である可能性が高いと言えるでしょう。
今申し上げたのはひとつの例に過ぎませんが、前回もお伝えした通り、
どんなに優れた人であっても自分の「窓」から見えない要素はあり、
いくら年齢が上でビジネス経験が豊富であっても、常に正しく人を見抜けるとは限らないのです。
社長や人事担当者、あるいは部門の責任者や直接の上司などが、
多忙ではあっても何回かに分けて面接すること。できればそれぞれ1時間程度は面接をすること。
そして-ここが非常に重要なのですが-その全ての評価を
『真摯に検討する』ことを必ず行なってください。
「うちには面接官が務まるようなヤツはいない」
ひょっとするとそんな風に考える社長もいらっしゃるかもしれません。
しかし面接官を任せることで、他人を客観的に見る視点も養われ、
自社(=組織)にとってどのような人材が必要なのかを面接官自身が
再考するよい機会になることでしょう。もちろん、合否の最終判断は社長がする前提で、
一度任せてみてはいかがでしょうか。
人をひとり雇い入れるのは非常に高価な買い物です。
住宅を買うとき、車を買うとき、入念な下調べをするのと同じように、
採用についても同様の(あるいはそれ以上の)慎重さが必要です。
採用面接にかける時間や手間そして人員、それらは全て必要な「コスト」と捉えてください。
1人の優秀な人材によって会社が大きく成長することもあれば、
1人のとんでもない問題社員によって経営が傾いてしまう程の大きな損害を被ることもあるわけです
。そのリスクを常に頭のどこかに置いておき、
複数名でしっかりと面接を実施するという謙虚な姿勢を忘れないようにしたいものです。
次回は実際の採用の現場から、いくつかの失敗事例をご紹介したいと思います。
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