第6回 「オーストラリアのワークライフバランス」

諸外国の労働環境から見るニッポン

前回は北欧の国々におけるワークライフバランスについてのお話でしたが、今回はその分野の先進国とも言えるオーストラリアを見てみることにします。

経済協力開発機構(OECD)が発表する「より良い暮らし指標」というものがあります。

世界36カ国で「住宅」「収入」「雇用」「共同体」「教育」「環境」「市民参加意識」「医療」「生活の満足度」「安全」「ワークライフバランス」の、より良い暮らしに欠かせない11の分野について10点満点で評価したもので、この2013年版によると総合ランキング堂々1位がオーストラリアです。

参考までに日本は21位という微妙な順位です。それでもこの順位にいられるのは「安全」(9.9点)と「教育」(9.0点)があるためで、ワークライフバランスについては4.1点と最低レベルでした。

さてオーストラリアの働き方ですが、まず残業が圧倒的に少ないという点で、…まあこれは世界中のどこの国を見てきても日本と比較にならないわけですが…驚くべきはオーストラリアではほとんどの企業で残業に対する賃金が支払われないこと。月給制の場合はその金額一本です。

やはり「就業時間内という与えられた時間内に出来る限りの仕事をする」「終わらない人は効率が悪い人、仕事ができない人」という考え方が根強いようで、誰かが残業をしていると「仕事の偏りがあるのは会社の労働管理自体に問題があるのではないか」というふうにまで見られるのです。

ということで終業時間の遵守は素晴らしく、17時を1分も過ぎると誰もいないことも普通だそうです。もちろんそれ以上会社にいても手当がつくわけではないから、というのも理由かもしれませんが、基本的に終身雇用という考え方がないオーストラリアにとって、いつ仕事を失うか判らない、という潜在的不安も大きな要因ではないでしょうか。事実彼らにとってアフターファイブは
自己研鑚の時間であり、資格の勉強や、夜は別の仕事をしているケースも多いとのこと。

羨ましい部分ばかりが強調されますが、ワークライフバランスの「ライフ」の部分は、ただ単に遊びや家族サービスにだけ充てられるためのものではなく、文字通り自らの「人生」を見据えた部分といえるのかもしれません。

●次回は「ドイツの有給休暇」を取り上げる予定です。

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