第4回「ベトナム人社長」

外国人労働者とのビジネスギャップ

先日、ベトナム人の社長と話をする機会がありました。

彼の仕事は、国外で就労したいベトナム人技術者と、優秀な技術者を採用したい
諸外国企業とをマッチングする仕事を行っており、挨拶もそこそこで話し始めると、
ご自分の名刺入れを座布団にして私の名刺を上に置いてから話し始め、聞くと
まだ30代前半の若く礼儀正しい社長でした。

訪日目的を聞くと、「日本も不景気だからラッキーです。日本企業の社長と
ゆっくり話ができる」と約1カ月かけて様々な企業に営業しているとのことでした。

ベトナム国は、日系企業をはじめ様々な国から企業が進出し、先日の日経新聞にも
記事が掲載されていましたが、ハイウェイだけでなく新幹線も南北に敷設する計画も
出来あがって、さぞかし賑やかかと思いましたら、就労人口の8割が農業に就き、
平均年収も$1,000強で、ワーカーが年8万人も海外へ出国し外貨を稼いでいるのが
現状とのことでした。
一方で大卒者はというと、工業団地にある大手企業に就職し、賃金については
満足しているものの、同団地は都市部から離れた郊外にあるため、毎朝6時に
家を出て、残業をしようものなら毎晩夜遅くに帰宅することになり、それが嫌で
退職するという定着率低下への対策に各企業とも頭を悩ませているようです。

他にも経済事情の話を聞かせていただき、暫くして、以前は何をされていたのかが
気になって聞くと、もともとは、ビジネスマナーや日本語等語学教育を行っていた
とのことで、少し意地悪な質問をしてみたのですが、若年層に対して万引きなどの
犯罪についての教育はどうしているのか聞いてみると、社長は本で色々なことを
教えても、何時間も、あれはダメこれもダメだといくら長時間話しても身にならない
ので、私ならこう教えますと前提した上で次のように語り始めました。

「いいですか、日本は今不景気ですから、企業努力を行い、人を減らし少ない人数
でも売上があがる体制を整えて、そして優秀な人材を欲しがっています。
だから日本に行くためには、一生懸命勉強しなければならない。
もし夢がかなって日本で生活することになったとしましょう。たまたま所持金が
少なくスーパーに買い物に行ったとします。日本のスーパー等は経営のため人を
減らしていますね。そして夜も売上を伸ばそうと営業しています。そのときあなたの
周りには当然店員さんも警備の人もいません。人を減らしているからです。
つい出来心でガムを盗んでしまったとしましょう。誰にもつかまらないで家に帰る
ことができたとします。これをいいことに、2回目、もう少し高価なものを盗んだと
します。いいですか、日本は防犯対策が完璧な国です。実はあそこにも、そこにも
防犯カメラが何十台もあって、実はガムを盗んだときもあなたはカメラに録画されて
いて、今回は私服警備の人も尾行し物陰から監視し、あなたがお金を払わず外へ
出た瞬間、あなたの両側に人が立ってあなたを捕まえますよ。」
とリアリティある話で教育します、と要は現実を想像させよう、伝えようと努力する
とのことでした。

例え話は万引きと極端でしたが、こんな教え方をする熱心な社長がいて、日本でも
さらに「上手に」教えることが出来たら、相乗効果が生まれてよりよい教育が
出来るのかもしれないと考えさせられるのと同時に、楽しいひと時を過ごすことが
出来た1時間でした。

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